知られざる日本のBEAUTYを再発見!@cosme NIPPON PROJECTでは、日本ならではの美容文化や美容素材、美容技術を発掘し配信していきます。
日本には、その土地ならではの「美容素材」や世界に誇る「美容技術」から生まれるコスメがたくさんあります。例えば「水」もそのひとつ。本連載では、そんな「日本のコスメ」を支える素材や技術を紐解き、知っているようで知らなかった日本コスメの魅力をお伝えします。
自然豊かな山岳地やのどかな温泉地など、日本各地で手に入れることができる天然水。その土地によって飲んだときの味わい、肌にふれたときのやわらかさが異なり、名水が湧き出る場所には国内外から多くの人々が水を求めて足を運びます。
日本の水は肌にも美味しい。
岩手県釜石市と遠野市の境にある標高1,147mの「釜石鉱山」も、良質な天然水が採水できる場所として知られています。
この鉱山は、1857年(安政4年)から開発が開始されたという長い歴史を持つ山で、かつては鉄や銅など良質な鉱物を発掘し、“鉄の町・釜石”を支え続けてきました。現在は大規模な鉄鉱石の採掘は終了し、地下空洞跡地利用事業を展開しています。その坑道を通って採水できるのが、地下から湧き出た天然水(以下、釜石の水)です。
いまや無印良品のスキンケア商品に欠かせない「釜石の水」
釜石の水は、岩盤に降った雨が何十年もかけて濾過され、染み出してきた天然水。非加熱処理をしたものは「仙人秘水(せんにんひすい)」という飲料水として釜石鉱山が現地で販売。その上質な味わいから、東京都内の料亭などでも料理に使われています。
そして、この水を加熱処理しスキンケア商品(クレンジング・洗顔フォームを除く)に取り入れたのが無印良品です。
数ある商品の中でも、「化粧水・敏感肌用」シリーズをはじめとするスキンケア商品は、さまざまな肌タイプに合わせた豊富なバリエーションで人気のアイテム。シンプルながら洗練されたプロダクトで老若男女を問わず愛され続け、アジアや欧米にも人気は拡大、着々とファンを増やし続けています。
釜石の水は、そんなスキンケア商品の人気を支える存在と言っても過言ではありません。
1990年代後半、スキンケアシリーズを初めて立ち上げた無印良品。2003年頃には既にほとんどの商品に釜石の水が使われていたといいます。一般的に化粧品の水というと精製水を使うメーカーも多い中、輸送費をかけてまで天然水、それも釜石の水だけを選んで使用しているのにはどんな理由があったのでしょうか。無印良品の商品企画・開発・販売を行う、良品計画ヘルス&ビューティー担当課長・宮尾弘子さんに、こだわりの水に込められたストーリーを伺いました。
「釜石の水は、軟水の中でも特にやわらかい“超軟水”。実際に飲料水の方を飲んだお客様にもスッとした飲み心地が伝わるようで、『やわらかい』『甘い』といった声を多くいただきます。水はスキンケア商品に最も多く含まれる原材料ですから、“飲んでもおいしい水は肌にも優しい”と考えました。実際、粒子が細かいので肌になじみやすく、化粧品に向いている水でもあります」
さらに、宮尾さんは数々の天然水を試してきた中で、釜石の水を選ぶ決定打となった理由を聞かせてくれました。
「釜石の水と無印良品のコンセプトがすごくフィットするなと思ったんです。天然の岩盤で濾過されて、クリアで柔らかくて…という水の特性が無印良品の考えと親和性が高かったことも、釜石の水を選んだきっかけになっています」
質にこだわったものづくりの原点は原料へのこだわり
【釜石の水を使用した代表的なアイテムはこちら】
画像提供/良品計画
取材・文/芳賀直美